五百旗頭真ミニ研究(VI)
五百旗頭はクラスター爆弾廃棄に、どう関わったか(1/2)
 
自ら抑止力を低下させる売国行為
  クラスター爆弾とは、容器となる大型の弾体の中に複数の子弾を搭載した爆弾である。葡萄の房(クラスター)に似ていることからきており、集束爆弾または親子爆弾とも呼ばれる。通常兵器のなかでも費用対効果が極めて高く、このため航空自衛隊はクラスター爆弾を、陸上自衛隊は砲弾、ヘリコプターから発射するロケット弾、多連装ロケットシステム用のクラスター型ロケット弾を長年かけて購入し備蓄してきた。本稿ではこれらを一括して「クラスター爆弾」と総称することにする。
 先ず田母神・前航空幕僚長のクラスター爆弾に関する見解を、「真・国防論」(田母神俊雄著、宝島社刊)から見て頂こう。以下は同書の「第3章 自衛隊に必要な装備とは?」の「テーマ21 地雷、クラスター爆弾」の全文である(下線は筆者記入)。

<抑止力としての使い方がある
 日本はオタワ条約の批准で対人地雷を廃棄することとなった。またオスロ会議に参加したことから、クラスター爆弾についても廃棄されることとなった。
 爆弾というのはほとんど、整備を必要としない兵器であり、保存がよければ何十年でももつ。
 何かなければ使うことはないが、もっていることが抑止力になる。
 地雷やクラスター爆弾を禁止するとなれば、日本の抑止力は低くなる。日本に攻めてくるなら撒くぞということができれば抑止力は高いのである。
 対人地雷を廃止して、代わりになるものを買うくらいなら、金をかけずに保管しておけばいいのである。予算が厳しい時に廃棄と買い換えで二重に金をかける必要などないはずだ。
 しかもオタワ条約には、日本の周辺国であるアメリカ、ロシア、中国、韓国、台湾は入っていない。日本だけがなぜ廃止するのか。
 たしかに地雷の被害にあった人達の写真はみなかわいそうである。しかし地雷の戦術的意味や抑止力は別なものである。
 第二次世界大戦のときに、ロシアは日本周辺に機雷をまいた。しかし戦後6,7年かけて回収作業を行い、日本の海は安全になったのだ。回収作業には海自、海保の掃海部隊があたった。一方、地雷はあとで掃除をするために、埋めたところを軍隊がきちんと記録する。そのため、埋めっぱなしでわからなくなる兵器ではないのである。
 日本は海に囲まれた長い海岸線をもつ国である。地雷やクラスター爆弾を廃棄することで、日本の防衛に大きな影響が出る。
 政治家には安全保障について、もっと深く考えてもらわなければ、国を守ることなど出来なくなってしまうのだ。


 上記の田母神文を補足すると、クラスター爆弾廃棄の前の平成9年12月、当時の小渕外相は「対人地雷禁止条約」に署名し、陸自が保有していた「本土防衛のための緊要兵器」と位置付けていた対人地雷が廃棄されてしまった。その際の政府判断は「地雷が無くとも、クラスター爆弾があるから防衛上、支障は無いだろう」というものだった。対人地雷の主要な生産または輸出国であるアメリカ、ロシア、中国、北朝鮮、韓国などが同条約を締結しないにも拘わらず、かかる措置を取る政治家は中国など仮想敵国に日本を売り渡そうとする売国の輩であると言って過言ではない。
 クラスター爆弾の廃棄は、対人地雷廃棄に続く国土防衛上の、おそらく最も効果がある兵器をむざむざと手放した痛恨の決定だった。しかも対人地雷禁止に加わらなかった主要な生産国(ロシア、中国)な勿論のこと、日本の周辺国総てがクラスター爆弾を保有し続ける中での日本だけが廃棄するのだ。
 これに至る経緯の概略は以下のとおり。

クラスター爆弾廃棄決定に至る経緯
1996(H8)年の国連人権委員会の決議で、大量破壊兵器・無差別殺傷兵器として、生物・化学兵器などの他「クラスター爆弾」などを指定。
H15.04.17 毎日新聞が一面トップで「空自がクラスター爆弾を秘密裡に保有」とする、「クラスターNO」のキャンペーン記事掲載。これに対して防衛庁は同日、「S62年度からH14年度までの16年間で148億円分調達した」ことを公表、また「基地祭りなどでも公開しており秘密にはしていない」と反論した。ただし陸自保有のクラスター弾については報道されなかったためか、防衛庁は同弾に関する情報を開示しなかった。関連して当時の福田康夫官房長官は、「専守防衛に必要、廃棄の必要は無い」と言明した。
H15.05.01 毎日新聞の五味浩基記者が、ヨルダンのアンマン空港に持ち込んだクラスター爆弾の不発子弾が爆発し、死者1名の他負傷者数名を出す死傷事故を起こした。
 この記者は不発弾と承知しながら、「キャンペーン記事に使える」と考えて、日本に持ち帰ろうとしたことが他記者の証言などから明らかになった。
 この重大事件を起こした毎日新聞は、内外から大きな非難を浴びたが、これを逆手にとった同紙は以後「クラスターNO」キャンペーンに社運を賭けてのめり込んだ。
H19.02.23 オスロで北欧諸国を中心にクラスター爆弾禁止に関する会議が開かれ、それまで不参加だった日本は直前になって突然会議参加を決めた。
 会議への参加は、外務省が「単なる情報収集のため」として独断で行ったもので、のちにこれを知った小池百合子首相補佐官(安全保障担当)から外務省に、なぜ参加したのかと詰問されている。
H19.05.25 オスロ会議に引き続き、ペルーのリマで「クラスター爆弾爆弾禁止会議」開催。日本は禁止条約反対の態度を変えなかった。
H19.09.26 安倍首相退陣、福田康夫政権誕生
H19.10.07 福田首相、五百旗頭に「防衛省改革」や「外交勉強会」への協力依頼。以後五百旗頭は頻繁に福田と面会していて、報道では「福田外交のキーパーソン」と持ち上げられる。
H19.12.19 毎日新聞が一面トップで、12月7日から始まるウイーン会議で提示予定の条約案文を掲載、併せてクラスター爆弾廃止に反対する日本非難キャンペーン。
 毎日のキャンペーンに合わせるように、外務省筋から「日本孤立論」が出始め、朝日新聞、毎日系列のTBS、NHK、共同通信等の反日マスコミが「国際的な集中非難を浴びる日本孤立論」を報じた。
 以下にNHKの放送内容を示すが、NHKまでが(NHKだからと言うべきか)クラスター爆弾廃棄キャンペーンを、これ程露骨に行っていたことを記録として留めるためである。(下線は筆者記入)

 <さて、皆さんはクラスター爆弾というものをご存じでしょうか。空中でケースが破裂して、数百個の子爆弾が地上にばらまかれ、そのうち5%から40%が不発弾となり、戦争が終わってからも農民や子どもたちを殺傷する爆弾です。(中略)
 『毎日新聞』19日付は一面トップ(注:上記)と連動して「クラスター爆弾禁止条約賛成、今でも遅くない」という社説を打ち、この条約案に米国とともに抵抗している日本政府に向けて、条約案に賛成するように求めています。航空自衛隊は、不発弾率の高い旧式クラスター爆弾を保有しており、日本が「オスロ・プロセス」に参加すればこれを廃棄する必要が出てきます。対人地雷を全廃した日本は、クラスター爆弾は保有していますが、これを率先して廃棄して、アフガニスタンのクラスター爆弾の不発弾除去のためのお金や技術を提供することの方がインド洋上での給油活動よりもはるかに現地の民衆に感謝される「国際貢献」になるでしょう。『毎日新聞』社説は、「軍縮の各分野で世界をリードしてきた日本が条約作りに加われば、その影響力は大きい。今からでも遅くはない」と書いています。
 思えば、1997年の対人地雷禁止条約については、亡くなった小渕恵三首相(当時)の決断が決定的でした。2003年2月まで、3年をかけて100万個の対人地雷をすべてを廃棄して、日本は「対人地雷全廃国」になりました。小渕首相の決断がなければ、ここまで早く実現できなかったでしょう。社説がいうように、「今からでも遅くはありません」。福田首相が「オスロ・プロセス」に参加する方向に踏み出すべきでしょう。
(NHKラジオ第一、平成19年11月23日放送)

H20.02.18〜22 クラスター爆弾禁止条約を本年中に作る旨の「ウエリントン宣言」が出される。この宣言に署名しないと次回からの出席資格がなくなるとして、外務省はこれに署名せざるを得ない立場に自らを追い込んだ。そして外務省は、この署名をもって「クラスター爆弾廃棄反対で、国際的に追いつめられた日本」をアピールするのに効果的に使った。
H20.04.25 「クラスター爆弾禁止推進議員連盟」発足。代表:河野洋平、事務局長:猪口邦子など衆参両議員40名。
H20.5.23 福田首相がダブリンでの国際会議で、クラスター爆弾禁止の条約案に賛成への政治決断を行ない、関係各省庁に前向きの対応を指示した。
H20.12.18 クラスター爆弾禁止条約に署名
H21.05現在 政府はクラスター爆弾禁止条約批准、及び「クラスター爆弾禁止法案」を閣議決定。両方とも今国会で議決される見通しで、陸自・空自が保有するクラスター爆弾4種全てが廃棄されることになった。

日本を無防備にしたいのか
 クラスター爆弾は、田母神空幕長(当時)が懸命に保有の必要性を訴えていて、安部政権は廃棄は考えていなかったのだが、福田首相は外務省の巧妙な誘導に乗せられ、またマスコミや反日議員らの「平和な世界実現に貢献すべき日本こそ率先して残虐な非人道兵器廃棄すべき」の声に迎合した。この決定の後の記者会見で福田は「日本を攻めてくる国はありません(だからクラスター爆弾は不要)」と、脳天気なことを言っている。

 若干繰り返しになるが、航空自衛隊はクラスター爆弾を、陸上自衛隊は砲弾、ヘリコプターから発射するロケット弾、多連装ロケットシステム用のクラスター弾頭型ロケット弾を保有している。
 日本の報道では毎日新聞などのキャンペーンが主にクラスター爆弾中心だったこともあり、陸自の多連装ロケットシステム(MRLS)に搭載されるロケット弾は殆ど注目されなかった。しかし筆者の認識では国土防衛上、廃棄によるダメージが大きいのは空自の爆弾よりも、むしろ陸自MRLSから発射されるクラスター型・ロケット弾なのだ。これを抑止力の観点から言えば、侵攻側にとって海岸線に布陣するMRLSは大変な脅威なのだが、日本にはクラスター型・ロケット弾が無いとなれば、クラスター弾を撃たれる心配なしに日本をクラスター弾で攻撃できる。侵攻する側としては、こんな嬉しいことはない。

 バカな政治家が平和主義者を気取り、売国・反日勢力に迎合した挙げ句の果てが、丸裸の日本なのだ。
 考えても見よ、中国、ロシア、北朝鮮、韓国、台湾といった東アジア周辺国は、クラスター弾禁止条約に参加していないのだ。日本の長い海岸線を、人海戦術に頼らず守るのに有効とされていた対人地雷は、すでにオタワ条約の批准によって廃棄されている。更にクラスター爆弾が廃棄されれば、僅かな数の自衛隊でどうやって効果的な防衛を行えるのか。日本の安全保障を真摯に懸念すれば、クラスター爆弾は周辺国が廃棄しない限り絶対に廃棄するべきではない、国防上の緊要兵器なのだ。
 福田はクラスター爆弾廃棄に関して、国家防衛の実務責任者である統幕長や幕僚長の意見を聴することはなく、片や防衛省の文官どもは、田母神に「何でも官邸団」とバカにされたように福田に意見具申した形跡もなく、官邸の言うがままに廃棄を受け入れた。クラスター爆弾の予算を承認した議会はどうか、総選挙を控えた議員らには、「クラスター爆弾禁止条約批准反対」なぞ望むべくもない。
 五百旗頭が金科玉条とする「シビリアン・コントロール」は、日本ではこんな政治家・議員・官僚が担っているのだ。(続く)
文責:岡田政典
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